スパイスコラム11 エージング効果を利用する

スパイスはブレンドしたばかりの段階では、それぞれのスパイスが個性を主張し単品の風味が強く感じられるのですが、しばらく時間をおく事で熟成され、お互いが引き立て合いながらもまとまったマイルドな風味に変わります。ちょうどワインの熟成と同じようなイメージです。

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マイルドカレーは熟成させてから使う

カレーパウダーにはインドタイプやヨーロッパタイプがありますが、両者の違いは、作ってからミックススパイスを寝かせておく時間(エージング)にあります。

インドの人々はカレーを作る時、毎日の調理の度にスパイスをブレンドして使う為、熟成されずにそれぞれのスパイスの個性が出るので若干薬臭いような、スパイシーなカレーとなります。
一方、ブレンドしてから一定期間寝かせるエージング処理を行うヨーロッパタイプのカレーは、全体にまとまったマイルドな風味に仕上がるのです。

ですから、カレーパウダーを自分で作る場合は、インドカレータイプが作りたい時は、調理の度にブレンドするか、1カ月くらいで使い切るような少量のブレンドを繰り返すほうがよいでしょう。マイルドなヨーロッパタイプを作る場合は、ブレンドした後に密閉容器に入れて数か月間冷暗所に放置することでエージングが進みます。

エージングの効果は、スパイス内の精油に化学変化と物理的変化が同時に起こるためと考えられています。芳香成分は温度変化や紫外線によって変化しやすいため、冷暗所で徐々に熟成させる方が望ましいでしょう。
カレーパウダー以外にも、中国の五香粉、フランスのキャトルエピスなどもこのエージング効果を利用しています。

 

スパイスも香水も同じ化学変化

昔から、香水は、何種類もの精油をブレンドして作られてきました。香水を作る際も、ブレンドしたばかりの香りと、数週間置いた後の香りでは全く異なります

単品で嗅ぐと嫌いだなと思う香りも、複数の精油と混ざり合うことにより非常に良い匂いに感じる事があります。ブレンド直後は、ツーンと強い香りが主張し合っている感じですが、熟成させると深みのある心地よい香りに変わります。

スパイスブレンドにも同じ事が言えるでしょう。

 

フランスのミックスパイス「キャトルエピス」の作り方

  • ブラックペパー・・・小さじ5
  • すりおろしたナツメグ・・・小さじ2
  • クローブ・・・小さじ1
  • ジンジャー・・・小さじ1ずつ

以上をパウダー状にしてから混ぜ合わせ、密閉容器に入れてエージングさせます。密閉容器で3〜4週間ほど保存が可能です。

フランス語で「キャトル」は「数字の4」、「エピス」は「スパイス」の意味で、インドでいうガラムマサラ、日本でいう七味唐辛子のような、フランスでとても一般的なミックススパイスです。煮込み料理に使われる事が多く、家庭でもミートパテやパンデピスに用いることもできます。
少量で十分効果があるので使い過ぎに注意しましょう。