ここまでスパイスの様々な分類を学習してきましたが、その中で「あれ、これはハーブじゃないの?」「フレッシュだとハーブで乾燥させるとスパイス?」などの疑問をもたれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここではそんなスパイスとハーブの違いについての様々な見解を、しっかり学んでいきましょう。
スパイスとハーブの定義
スパイスとハーブの違いは今日でもさまざまな見解があり、結論から言うと明確な区別がないのが現状です。
もともとの名前の由来は、スパイス(spice)はラテン語で ‘species’(特別な種) 、ハーブ(herb)はラテン語で ‘Herba’(草木) を語源としています。これを見ると、種はスパイス、草木はハーブと分類できそうな気がしますが、1つの植物でもセリ科のように種も葉も使えるものは、どう区別できるのでしょう?
種はスパイス、葉はハーブとなるのでしょうか? 本によっては、
「スパイスは食用のみで、ハーブは薬用も含まれる」
「スパイスはドライの種で、ハーブはフレッシュも含まれる」
「スパイスには木は含まれるが、ハーブは草だけ」
「ハーブ系スパイス」
「ハーブはスパイスに含まれる」
と、実に様々な異なる見解が書かれています。やはりこの分類については、今はまだ明確な区別がなされていない、というのが現状なのです。
コリアンダーはスパイス?ハーブ?
コリアンダーは香草・パクチーなど様々な呼び名があります。同一のものを指しますが、コリアンダーは主にスパイスの時に用いられる英語の呼び名で、エスニック料理など生食の呼び名としてタイ語のパクチーという区別が何となくされています。今やパクチーは専門店が次々できるほど、人気が高まっているハーブですね。
ハーブの中にはこのパクチーのようにキッチンハーブと呼ばれるルッコラやバジルのような、野菜感覚で使われるものもあります。スパイスにフレッシュは含まれないとすると、フレッシュスパイスを使ったレシピ本などはすべてハーブと書き直さなければなりません。
レモングラスは、ドライでもフレッシュでも使いますし、先ほどご紹介したコリアンダーは種はスパイスと呼ばれますが、生葉はパクチーですから、フレッシュハーブとしても有名です。またタイ料理には、乾燥させたスパイスはもとより、レモングラスやバイマックル(こぶみかんの葉)が使用されます。
草だけとは限らないハーブ
また、ハーブは草だけとは限りません。
クローブ、シナモンなどの薬効成分を利用したメディカルハーブ療法やアロマテラピーがありますし、西洋シナノキやリンデンなど、樹皮や葉はハーブの中に沢山含まれています。
スパイスとハーブの境界線を引こうとする試みは過去何度もなされてきましたが、スパイスの奥深さや種類の多さ、その調理法の幅広さや文化の違いにより、やはり明確な境界線を設けることは難しいようです。
※メディカルハーブ療法やアロマテラピー・・・薬効成分の高いハーブは沢山ありますが、日本では、一般市民が手にすることが出来るハーブ類は食品扱いで、医薬品ではありません。イギリスやドイツではハーブを医薬品としてハーバリストが処方しています。ただ、日本でも中国のハーブ=漢方ならば中医が存在します。
■Lesson2-4 まとめ■
- スパイスとハーブの区別に関しては、今日でも様々な見解がある。
- スパイス(spice)はラテン語で ‘species’(特別な種) 、ハーブ(herb)はラテン語で ‘Herba’(草木) を語源としている。
- 生の葉や草のイメージが強い「ハーブ」という言葉だが、クローブ、シナモンなどの薬効成分を利用したメディカルハーブ療法やアロマテラピーが存在し、西洋シナノキやリンデンなどの樹皮や葉のものもハーブの中に含まれている。