Lesson 4-3 似たものスパイス③からしとマスタード

Africa Studio/Shutterstock.com

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辛味成分が異なるマスタード類

「マスタード」の直訳は「からし」となりますが、日本で言うところの「和芥子(わがらし)」ではありません。「マスタード」や「洋からし」として売られているものは、ホワイトマスタードにお酢や調味料を混ぜてあり、辛味は弱くなっています。
それに比べて「からし」と表示してあるものは、辛味の強い「和芥子」です。

3つのマスタード

マスタードはブラックマスタード、ホワイトマスタード、オリエンタルマスタードの3つに大別されます。南ヨーロッパ原産のブラックマスタード、インド原産のオリエンタルマスタード(特徴が類似するブラウンマスタードも含まれる)、ヨーロッパや北アメリカが主産地のホワイトマスタードは、それぞれ辛味成分が異なります。

ホワイトマスタード

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ホワイトマスタードの辛味成分(ρ-ヒドロキシベンジルイソチオシアネート)は揮発性が低く辛味も弱いのが特徴です。

ホットドックやフランクフルトに使うマスタードは、このホワイトマスタードをメインに調味料などが含有されていますから、辛さよりも風味を楽しむマスタードです。ちなみに、ホットドックのマスタードは色が黄色いですが、これは着色料やターメリックなどで色づけされている黄色です。

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オリエンタルマスタード・ブラックマスタード

Thanthima Lim/Shutterstock.com

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一方、オリエンタルマスタード(ブラウンマスタード)もブラックマスタードにも入っている辛味成分(アリルイソチオシアネート)は揮発性が高く強い辛味を持っています。ちなみに、ワサビにも同じ成分が含有されています。

日本には中国から渡来したオリエンタルマスタードが和芥子として栽培されてきました。こちらは粒の色が黄色いので、オリエンタルイエローマスタードとも言われます。葉の部分はからし菜として漬物や薬味にも使われています。

餃子や焼売などにピリリと少量使うからしの場合は、和芥子を使った方が料理の味を引き立てることができます。

様々な調味マスタード

マスタードシードの分類は大きく3つに分けられますが、マスタードと名前のつく製品はもっと多くあります。ここで少しまとめておきましょう。

イエローマスタード

アメリカンマスタードとも呼ばれ、アメリカ合衆国、カナダなど北米で日常的に用いられるもので、製品名にもなっています。使用されているのは、品種的にはホワイトマスタードが多く、ターメリックによって鮮やかな黄色に色づけされています。
辛みはほとんどなく、酢や調味料によりマイルドな酸味を持ち、ホットドッグなどには欠かせない調味料となっています。

ディジョンマスタード

フランスのディジョン地方の伝統的レシピに則って作られるマスタードで、漬け込みに白ワインを使用し芳醇な風味があります。日本でも「マイユ ディジョンマスタード」なども販売されているため、見かけた事がある方もいらっしゃることでしょう。
ホワイトマスタードシードが原料なので、日本のからしに似たような辛さはなく風味を楽しみます。

粒マスタード

ブラウンマスタードを粉に挽かずにそのまま使用したもので、ソーセージやポトフなどの薬味として好まれています。辛みは控え目でこちらも風味を楽しむのがメインです。

ハニーマスタード

マスタードに蜂蜜を加えて作るのが基本ですが、ホームメイドで簡単に作れるため、粒マスタードを用いたり、酢やマヨネーズを加えるレシピもあります。チキンやハムなど肉料理などソースとして主に使用されます。

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ハニーディジョンマスタードソースはグリルサーモンによく合います

■Lesson4-3  まとめ■

  •  マスタードシードはブラックマスタード、ホワイトマスタード、オリエンタルマスタード(ブラウンマスタード)の3つに大きく分けられる。
  • ホワイトマスタードの辛味成分(ρ-ヒドロキシベンジルイソチオシアネート)は揮発性が低く辛味も弱いのが特徴である。
  • オリエンタルマスタード(ブラウンマスタード)もブラックマスタードにも入っている辛味成分(アリルイソチオシアネート)は揮発性が高く強い辛味が特徴である。
  • マスタードには、様々な調味マスタードがあり、ホットドックやポトフだけでなく、ソースや風味をプラスするものとしても世界中の多くの国で親しまれている。