フランスの繊細な味と地中海の大らかな味
ヨーロッパは、北と南で文化も料理も随分と違います。食文化の面では、フランスと地中海地方でスパイスを上手に使いこなし、独特のレシピが生まれてきました。
フランス料理とスパイス
世界屈指の美食の国と言われるフランスのスパイスの歴史を辿ってみると、大航海時代のイタリアに始まります。スパイス交易で莫大な富を築いたメディチ家とフランス王家の婚姻により、フランスに持ち込まれた最高品質のイタリア料理は、もともと美食家であったフランス人の味覚で、より洗練され今日のフランス料理となりました。
フランス料理はその数300~500ともいわれるソースが決め手となります。魚介や肉、野菜のエキスに沢山のスパイスを使って複雑な味わいに仕上げますが、熱帯地方と違って強烈な風味にすることはなく、クリームやバターの風味を損なわないような繊細な味わいに仕上げます。
地中海料理とスパイス
これに対し、ギリシア、イタリア、ローマなど明るい太陽のもとの国々は、気候に相応しく大らかな味付けを好みます。地中海料理には大航海時代に南米から伝来したトマトを多用し、地中海原産のオリーブから採れるオリーブオイルを組みあわせ、魚介、肉、野菜をプラスしてゆく料理が多くみられます。
トマトもオリーブも、野菜の中でも独特な強い風味を持つ方ですので、使うスパイスも味にメリハリをつけるため、自己主張の強いものが使われます。ガーリックやバジル、ローズマリーやタイムなど他のヨーロッパでは少なめに使われるようなスパイスを地中海料理では多用し、トマト料理の味にめりはりをつけます。
また、地中海地方は、スペイン原産の最高級サフランを利用し、特産の魚介類を使ったパエリヤやブイヤベースといった伝統料理も生み出しました。
ヨーロッパ料理に頻用されるスパイス
ヨーロッパとひとくくりに表現しても、フランスと地中海でも特徴が異なるように、様々なスパイスが地域色豊かに使用されています。ここでは、その中でも代表的なものを幾つか押さえておきましょう。
ヨーロッパで良く使われるスパイス
- ローズマリー
- バジル
- タイム
- セイボリー
- タラゴン
- チャービル
- パセリ
- チャイブ・・・など
代表的なミックススパイス①「エルブドプロバンス」
エルブドプロバンスとは、南フランスのプロバンス地方の家庭の庭先に自生するハーブ(タイム、セージ、セイボリー、オレガノ、ローリエ、フェンネルなど)を乾燥させミックスしたもので、爽やかな風味で肉や魚の臭いを抑えます。
これに対し、フレッシュのハーブ系ミックススパイスをフィーヌゼルブと言います。チャイブ、タラゴン、パセリ、チャービルの組み合わせが伝統的でオムレツ料理などに使います。
代表的なミックススパイス②ブーケガルニ
フランス語でブーケガルニ( bouquet garni)とは「香草の束」のことで、パセリ、タイム、ローリエ、エストラゴンなどの香草類を数種類束ねたものを指します。
ブイヨンやスープを調理する際に、肉・魚介類の臭みを消す目的でよく使用され、食材の臭みに応じてスパイス・ハーブの組み合わせが変化します。また、地域や家庭によってもその組み合わせは様々です。
スパイスを意識してみる各国の郷土料理
ここにあげるのはほんの一部にすぎません。ランチやディナーでヨーロッパ料理を食する時は、ぜひスパイスを意識してみるのも、スパイス&ハーブコンサルタントとしての感覚を磨く楽しい実践です。
■Lesson5-1 まとめ■
- スパイスの使い方は、ヨーロッパ地域1つを見ても地域色豊かで様々である。
- フランスのスパイスの歴史を辿ってみると、大航海時代のイタリアに起源がある。
- フランス料理はその数300~500ともいわれるソースが決め手であり、スパイスはクリームやバターの風味を損なわないような繊細な味わいを仕上げるように用いられる。
- ギリシャ・イタリア・ローマなどの地中海地域は、ガーリックやバジル、ローズマリーやタイムなどの自己主張の強い、他のヨーロッパでは少なめに使われるようなスパイスを多用し、味にメリハリをつける。
- ヨーロッパ料理に頻用されるスパイスには、ローズマリー バジル タイム セイボリー タラゴン チャービル パセリ チャイブなどがある。
- スパイスを意識していろいろな料理を楽しむことで、スパイスコンシェルジュとしての感覚を磨くことができる。