Lesson 6-2 海外から伝わったスパイス

Lesson6-1で学んだ日本独自のスパイス以外に、ヨーロッパやアジアから伝わったスパイスもあります。これらは、シルクロードや南蛮貿易など、長い歴史のなかで少しずつ日本に入ってきたものです。

 

正倉院のスパイス

奈良時代の大きな寺院は国家に保護されており、沢山の倉庫を持っていました。中でも、最も大切なものを入れた倉は「正倉」とよばれており、東大寺の正倉院の名称はこの正倉に由来しています。正倉院の収納品は当時の先進国、中国の唐から日本にもたらされたものですが、これらの中にはシルクロードを通じて交流のあったはるか西方の品々も多数みられます。8世紀の主要文化圏、エジプトから中国までの宝物が収められています。

正倉院には「正倉院薬物」と呼ばれる薬が献納してあります。これらは唐招提寺を建立した際に鑑真が携行してきたものや遣唐使などによって中国からもたらされたものであると言われています。その中には、漢方薬としてのスパイス類(胡椒、クローブ、シナモンなど)が確認されています。

また正倉院の経箱にはクローブがはめ込まれています。当時、胡椒の粒は貴族の間で胃腸の薬として使われていました。他にも御物の中には長胡椒(ロングペパー)が入っていました。長胡椒(ヒハツモドキ)は沖縄の島々でピパチ、ピパーツ、ピーヤシなどと呼ばれ14世紀あたりには渡来していたようですが、沖縄以外ではあまり知られていなかったようです。

また、中国からは禅宗の伝来と共に、茶の葉から作る「お茶」を飲む習慣も広まり、室町時代には茶の湯文化が成立しました。

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貿易により持ち込まれたスパイス

その後南蛮貿易により、日本にも沢山のスパイスが持ち込まれるようになりました。唐辛子もこの時期に広まりました。ナツメグやサフランなどは江戸時代に渡来しますが、薬用、鑑賞用などに用いられ料理には使われませんでした。

西洋のスパイスが沢山持ち込まれるようになったのは明治以降ですが、カレー粉やウスターソースなど製品化されたものが多く、いろいろなスパイスが単品で市販されるようになったのはごく最近になってからのことです。

 

■Lesson6-2 まとめ■

  •  奈良時代に建設された宝物庫である正倉院には、シルクロードを通じて交流のあったはるか西方の品々が納められており、その中には漢方薬としてのスパイス類(胡椒、クローブ、シナモンなど)も確認されている。
  • 南蛮貿易により日本にも沢山のスパイスが持ち込まれるようになり、唐辛子もこの時期に広まった。
  • 西洋のスパイスが沢山持ち込まれるようになったのは明治以降だが、カレー粉やウスターソースなど製品化されたものが多かった。様々なスパイスが単品で市販されるようになったのはごく最近になってからのことである。