ミイラ・ピラミッドづくりにも使用されたスパイス
古代エジプトとスパイスは、切っても切り離せない関係性を持っていました。王侯貴族から庶民に至るまで、暮らしの中でスパイスを有効活用していたのです。
エジプトといえば、最も有名なのはミイラとピラミッドでしょう。輪廻転生が信じられ、未来の復活の日まで肉体を保存するために、王家の人々の遺体にはミイラの加工が施されていました。その際に防腐処理として用いていたのがスパイスなのです。
防腐処理として使用されていたのは、カシア、シナモン、クミン、アニスなどのスパイスやハーブで、これらの働きにより後世までミイラという形で現存することができています。
また、ピラミッドなどを作る肉体労働者には、疲労回復やパワーを付けるガーリックやオニオンを使った食事が与えられました。有名なツタンカーメンの墓からもガーリックが見つかっています。
その他、寺院の礼拝の際などの薫香としても使用され、外用薬やお香に用いられるなど、エジプト文明にはスパイスが深く関わっています。
神話や聖書の中のスパイス
旧約聖書の中に出てくる逸話にも、シバの女王が愛するソロモン王を訪ねる際にシナモンを贈ったというエピソードがあります。
紀元前後の文献、神話、絵画などにもスパイスはしばしば登場します。
エジプト神話に出てくるフェニックス(不死鳥)。世界的に大ヒットしたイギリス魔法使いのお話では、重要な局面でフェニックスの死からの復活のシーンがありますが、エジプトの神話では、死期が近付くとシナモンの小枝を集めて火を起こし、その中に自らの身体を投じ、灰の中から新生復活すると言われています。
他にも、ギリシア神話には勇気の証としての月桂樹がシンボルとされていました。古代ローマでは競技の勝者に月桂冠が与えられ、現代のオリンピックはこの行いを再現しています。
その他にも愛のシンボルのオレガノなど、聖書の中にも数えきれないほど沢山のスパイスやハーブが登場します。ギリシアのサントリーニ島の紀元前1600-1500年のフレスコ画には、サフランを採集する姿が描かれています。
■Lesson1-2 まとめ■
- 古代エジプトでは、防腐処理としてカシア、シナモン、クミン、アニスなどのスパイスやハーブを使用していた。
- ピラミッドを作る労働者に、ガーリックやオニオンを入れた食事を食べさせていた事実も残っている。
- スパイスは神話や聖書にもたびたび登場し、そのなかでもギリシャ神話のなかの勇気の証としての月桂樹の王冠は、古代ローマのオリンピックから現代まで受け継がれている。