- マジョラム
- マスタード
- ミント
44・マジョラム
- [英名]marjoram
- [和漢名]マヨラナ
- [学名]Majorana hortensis Moench Origanum majorana
- [科名]シソ科
- [原産地]地中海東部
- [向いている料理]トマト料理 チーズ料理 豆料理 ドレッシング 肉の臭いけし ガスパチョ サラダや料理のつけあわせ スープ ドレッシング バターやソース フィーヌゼルブやブーケガルニ マリネ液 グリル料理 グラタン 揚げ物 煮込みの仕上げに。ローストターキーの詰め物。ソーセージ レバーペーストの下味付け。
- [薬効]消毒 解毒 防腐 風邪 頭痛 精神疲労 胃腸病 血圧降下 安眠
古代ギリシア・ローマでも薬効が認められていたスパイス
地中海沿岸地方原産で古くから用いられていたハーブ系スパイスの1つであり、古くから消毒、解毒作用や保存効果があることがよく知られ珍重されていた。古代エジプトでは、クミンやアニスと共にミイラの保存に使用されていたスパイスである。
芳香の主成分はテルピネンで精油の約40%を占め、他にテルピネオール、シネオール、メチルシャビコールなどを含む。これらの芳香成分は開花後4日目が最も強く、その後減少するので刈り取るタイミングが重要となる。
また生の葉と乾燥したものとでは香味の質も強さも異なる。
オレガノと混同されやすい
マジョラムはシソ科の多年草で、数多くの品種がある。ポットマジョラム、スイートマジョラム、ウインターマジョラム、ゴールデンマジョラムなどだが、スイートマジョラムを一般的にマジョラムと呼んでいる。オレガノはワイルドマジョラムという別名を持ち、形態がスイートマジョラムと酷似するためにしばしば混同されるが、オレガノの方が香りが強く、マジョラムの方は穏やかな甘い香りで多少ほろ苦いという違いがある。
マジョラムを料理に取り入れる
マジョラム香り付けや臭み取りとして使用でき、白身肉や鶏や豚肉用のブーケガルニに適している。また、ハンバーグなどの肉料理やトマト、チーズなど様々な素材との相性がよく、煮込み料理やシチューにもピッタリ。ソーセージを家庭で作る場合にも使用でき、特有の臭み消しになるので欠かせない存在である。
スパイス豆知識・古代ギリシア・ローマの幸福のシンボル!
古くはギリシャでも盛んに利用されたマジョラムであるが、学名のOriganumはギリシャ語のoros(山)とganos(喜び)の合成語で「山の喜び」の意があり、新婚夫婦にも欠かせない存在であった。これを贈る事で夫婦の幸せを願ったと伝えられている。(ちなみにオレガノにも同様の意味がある)
その他、ヨーロッパではマジョラムによる伝説は数多く存在している。
45・マスタード
- [英名]Mustard
- [和漢名]芥子、辛子(カラシ)
- [学名]Brassica alba Boiss白からし Brassica nigra Koch 黒からし Brassica juncea Cosson カラシナ
- [科名]アブラナ科
- [原産地]南ヨーロッパ 地中海地方 中央アジア 中国
- [向いている料理]ソース ドレッシング 薬味 サンドイッチ ホットドック
- [薬効]リウマチ 神経痛 肺炎 鼻炎 頭痛 消化促進
ペパーと共に辛いスパイスの代表格
古代ローマでは既に葡萄の搾り汁とマスタードの種子を混ぜてペースト状にした調味料が用いられていたという。マスタードと言う名は辛いブドウ液を意味する「ムスタムアーデンス」というラテン語に由来する。
マスタードの独特の香りとつんと鼻に抜ける辛味は種子のままでは感じられず、粉末にしてぬるま湯で練る事により酵素の働きで芳香と辛味が発現する。
日本のからしは黒からし
マスタードには多くの品種があり、市場の呼称としてはオリエンタル、ブラウン、ブラック、ホワイト、イエローの5種があるが、栽培品種は白からし、黒がらしの2種に大別できる。
- 白からし:南欧、地中海原産でホワイトやイエローマスタードなど。日本の洋からしはこちらのタイプである。
- 黒からし:南欧、地中海原産のものと、中国原産のものがある。中国原産のもので日本でカラシナと呼ばれるものの種子を和からしと呼ぶ。
スパイス豆知識・暫く置いてから使う!
マスタードは練ってすぐよりも時間を置いた方が辛味が増し、食べる直前にもう一度強くかきまぜるとさらに辛味が増すため、マスタードの風味が好きな方にはおすすめ。ビネガーやレモンを混ぜて練ると酵素の活性が抑えられて保存性が高まり風味も増す。
46・ミント
- [英名]mint
- [和漢名]薄荷 メグサ メハリグサ
- [学名]Mentha piperita L.ペパーミント Mentha arvensis L.和薄荷
- [科名]シソ科
- [原産地]地中海沿岸 アジア
- [向いている料理]ベトナム料理 タイ料理 ラム・マトン料理 菓子 フルーツデザート ゼリー ティー
- [薬効]消毒 消化促進 強壮 疲労 胸焼け つわり 鎮痛 かゆみ止め 防腐 殺菌 矯臭 軟膏 貼薬
料理以外にも口内清涼剤や香料に
ミントの歴史は古く、ヘロドトスによれば紀元前3733年に完成したギゼーの大ピラミッドの建設には労働者たちの食事にミントが用いられたと記録されている。
ミントは清涼感に溢れた芳香をもつシソ科の多年草で、古くから世界中で料理や口内清涼剤、香料として広く使われてきた。繁殖力が強く交配しやすいので数えきれない雑種が生まれており、日本でもアップルミントやパイナップルミント、オレンジミント、オーデコロンミントなどなど、色々なミントが存在するが、精油の性質や用途の面から、地中海原産のペパーミント、ヨーロッパ原産のスペアミント、アジア東部原産のクールミント3種に大別できる。
アジアでは生の葉をそのまま料理に使うが、臭味の強い獣肉には乾燥葉が使われることが多い。ペパーミントティは消化促進や風邪に効果があり、ミントの精油は筋肉痛の貼り薬やマッサージや偏頭痛に効果がある。
日本では昔から「はっか飴」として有名
ペパーミント、クールミントの芳香主成分はメントールで、スペアミントはカルボンが主成分となる。清涼感はペパーやクールミントのほうがスペアミントより強い。そのため、少しだけミントの彩りや香りが欲しいデザートの飾り付けの場合は、ほのかな甘味もあり優しい爽やかさのスペアミントのほうが使いやすい。
彩りや香りのアクセントになるが、料理に使う際は日本人には嗜好性の強いハーブ。砂糖の甘みと調和するので、キャンディーやゼリーに使われることが多く、日本でもはっか飴として古くから親しまれている。
スパイス豆知識・神話にまつわる名の由来!
ギリシア神話ではミンテ(メンテ)というのは黄泉の国の神ハーデースに愛された女性の名。夫ハーデースの浮気に気づいた妻ペルセポネは嫉妬に狂い、ミンテを踏みつけて恐ろしい呪いをかけ、ミンテは草に変えられてしまった。以来この草はミントと呼ばれ、ミントはハーデースの神殿の庭で愛らしい存在感を保ったまま咲き誇り続けたとされている。
なお、ペルセポネはミンテを雑草に変えただけで、それを芳香を放つミントへと変えたのは彼女を憐れんだハーデースだという説もある。
古代ヘブライの教会の床にはミントが敷かれており、数百年後のイタリア教会でも同じ習慣が残っていたようである。